だって好きだから/千秋ver



今 日はやっと演奏旅行から帰ってきた日。だから俺はあいつを食事に誘うことにした。
喜ぶかな?
あいつのい喜ぶ顔を 思い浮かべながらいい笑顔をしながら、電話をかける。
しばらくすると、やっと繋がってのだめが出た。






何 日も留守にしていた代わりに、あいつを誘って。









「ア ロー!のだめデス!むきゃ!?先輩!?もう帰ってきたんデスか?!」
電話ごしから聞こえるあいつの声。久しぶりに聞くのだめの声。恋 人の声。









本 当は演奏旅行中に電話をしようとしたんだけれど、あいつも忙しいだろう思って電話をするのを避けていた。そして今日。久しぶりに聞いた声。久しぶりだから なんだか懐かしい、そんな気がした。







自 分はどれだけ、どれだけのだめ中毒なんだろう。あいつの声を聞くだけでこんなに落ち着くなんて、少しおかしい。でもなんだか幸せでそんな気分。






あ あ、早くあいつの顔を見たいな。そんなことを思い浮かべながらのだめに用件を言う。

「ああ、今帰ってきた。 なぁ、これから暇か?迎えにいくから待ってろ。その後、どっか食事いって・・」

「はうー!!わかりました!楽し みにしてます!!」










用 件だけいうと電話はきれてしまった。これから久しぶりに二人でデート。なんだか胸がドキドキ、ドキドキ。
あいつに会うのがこんなにも 楽しみなんて。
一旦アパルトマンに帰ったあとそのまま、コンヴァトまでのだめを迎えにいった。
いつもの喫茶店に 車を止めると向こうからのだめが笑顔でこっちに向かってくるのが見えて顔が緩む。
コン、と窓をノックする音。カチャンと車のドアをあ けてのだめが入ってくる。








「の だめ、」
「先輩お待たせしましたー!!待ちました?」
ストン、と車の助手席に座るとシートベルトをかけて。
車 のエンジンを入れて車を走らせる準備をする。

「いや、俺も今来たばっかだから」







そ して俺たちは向かう。のだめと二人っきりでデート。
本当に久々のデートだから








****:



**









そ れから数日後のことだった。たまたま俺はアパルトマンののだめの部屋に遊びに来ていた。

「ふーん、また課題ださ れたのか・・・」
「ハイ。。。」




「そ のスコア、ちょっと見せて?」
新しい課題が気になって俺がのだめに言うとちょっとまってください、と自分の鞄をあさりだす。








「む きゃ?」
「どうした?」




ま さか、そのスコア、学校に忘れてきたとか?まぁ、のだめにしてはありえることだけど、でもなんだか様子が変だ。




鞄 の中からすっと何かを取りだす。




「手帳・・?」





気 になって俺も立ち上がってのだめのそばによる。見たことない手帳。自分のではない。






「誰 かのと間違えてもってきた?」
首をかしげて俺をみるのだめ、俺はその手帳をのだめから受け取って中を見る。他人のプライバシーにかか わることだからあまり見たくはなかったけれど



最後のページには住所と 名前が書かれていた。




「リュカ・ボト リー・・?」
「ぎゃぼっ!リュカの手帳?どうしてのだめの鞄の中になんか入ってたんでしょか?」
のだめが間違っ てそのリュカ、とかいうやつの手帳を持ってきたとか?それとも、そのリュカとかいう男がわざとにのだめの鞄の中に手帳を忍ばせたとか?ありえない話ではな いけどな。








そ してその手帳の持ち主にのだめは電話をかけると相手は出て、どうやら取りにくるようだ。



そ して来たのは子供・・・?
子供、ガキか。なんだか少しだけ安心した自分が今ここにいる。

「あ へー真一君ははじめてですよね?この人がリュカデス。

「え?こいつが・・?」

「は い、かわいいでしょー?」

「確かにかわいいけど・・」






そ れにしても手帳にはびっしりといろんなことが書かれていたな。丸で子供って思わないぐらいの内容だった気がする。丁寧で細かくて。自分も手帳を持ち歩いて るけどあそこまでは細かくない。







そ れからなんだか色々会話してあっという間に時間はすぎてしまった。のだめのやつリュカとばっか話やがって。。。
こんなガキの何処がい いのか、自分ではさっぱりとわからない。






な んとなく時計を見るともうかなり遅い時間になってしまってた。
「俺、もう帰らないと・・・」
「え、先輩もう帰っ ちゃうんデスか?」
「明日も早いから」



そう、明 日もマルレのリハーサルで休みがない。もっともっとのだめと一緒に居たかったけれど…、あしたも仕事。まぁ、でもこのままこいつの部屋に泊まってもいいん だけれども…
ちらっ、とのだめの方に視線をやると、何処か寂しそうな顔を俺に見せる。ふっ、と笑みを作ったあと自分はのだめに




「明 日もくるから」
「はうわかりました・・・」



きっ とのだめも俺と離れるの、寂しいんだな・・そう思った。
だって自分も寂しい、そう思うから。



「僕 も帰るよ」




いつの間にか二人の世界に入っていた ら横からリュカが口だしした。




「リュカ も・・・?」



時計はもうかなり遅い時間をさしていた。子供が寝る時 間。



「子供はもう寝る時間だからな」
「う、うる さいな!!」





その時だっ た、俺とのだめの目があったのは。そしてのだめはニヤリと笑み。

「そだ、それじゃ、真一君、リュカを送ってって ください。リュカの家は先輩のマンションまでの通り道だから」
マジかよ・・・ちょっといやそうな顔をするがこんなくらい夜道を子供一 人行かせるわけにはいかないから。
「ああ、いいけど。それじゃのだめまた。ほら、いくぞ、リュカ。」
「あ、う ん。それじゃのだめ明日コンヴァトで!!」




「はー い、二人ともお休みなさいー!」





ひ らひらと手を振るのだめ。






そ してアパルトマンを後にし、俺たちは車に乗り込む。



リュカは助手席に 乗ってシートベルトを締める。その席はいつもあいつが乗っている席。のだめの席だ。

「ねぇ、千秋?」

俺 は運転に集中していたためすぐには返事をしなかった。というかあまり話したくなかったのもあるけれど。

「なん だ?」
だけどそのあとすぐに返事をして。

「千秋はさ、のだめのどんなところに惚れたの?」

話 しかけるから何事かと思ったらいきなりそんな話かよ。のだめの話・・惚れたって・・・!!
俺は思わななかった話で、ぶっ、と吹いてし まった。

「お前なぁ・・」

ガキに教えることじゃない。書きになんでい わなきゃいけないんだ・・・
はぁ、とため息をついた後じっと、見つめるリュカの視線に折れて、俺は口を開く。

「惚 れた…かはわからないけれどいつの間にか惚れていた。多分、あいつのピアノ。俺、好きだから。最初はへたくそって思ってたけど、だんだん聞いていくうちに 好きになって、絶対あいつをプロにさせてやりたい、そう思った」

ああ、俺は何ガキ相手にこんなこと言ってるんだ ろう。思いっきり顔が赤くなる。あたりは暗いから顔の赤いのは見えないけれど。

「え…?そんな理由?」
だ けど、リュカは目を丸くして、俺に聞いてきた。

そんな理由じゃ悪いのかよ・・
「ほかにある か?」


ちょっと睨むとリュカがぶっ、と思いっきり吐き出した。

ちょ、 おい、きたねーって・・・!!そんな理由じゃだめなのかよ。このクソガキ、むかつく!!

「本当にのだめのこと好 きなんだね、千秋は…!」

「はぁ!?」
「なんでもない」

ガ キの考えてることって自分には理解不能・・・・・。

そのまま自分は車を走らせた。


「そ れじゃ、千秋今日はありがとう!」

「ああ、さっきの話、絶対のだめには言うなよ!男同士の約束だからな」

の だめ、あいつには絶対に知られたくない、あんな話をこのガキとしたことを。知られてたまるかってんだ。俺は強く釘打った。
「大丈夫だ よ!お休み!!」

ふふ、と笑っているリュカの顔が少し見えた、そんな気がした。
子供相手に 俺は何をしているんだろう。

そのまま俺は車を自分のマンションへ向けて走り出した。