い つかこんな日が来る事は。
本当はもうずっと前から、分かっていたんだ。





『永遠の白い花』





目 の前の重厚な扉を控え目にノックして、そっと開ける。
そこには大きな窓から降り注ぐ光を一身に浴びている、天から舞い降りたというの がぴったりの女性が一人。

「あ、リュカ」

柔らかな栗色の髪は、艶やか に輝いて。
柔和な微笑みは、極上の幸せに彩られて。

「やあ」

シ ンプルなドレス。
だけど上品に幾重にも重なったオーガンジーのスカートがふわりとしてて、とっても綺麗で、凄く、似合ってて。

「お めでとう、のだめ」
「ありがとデス」
「これ、お祝い」
「むきゃー!とっても綺麗デス!あり がとーデス!」

僕はのだめに、カサブランカのブーケを渡した。
のだめはくんくんと花束に顔 を埋めて、いい匂いだと香りを吸い込んでいる。

神々しいほど綺麗なのに、どうしてこの人はいくつになっても可愛 いという形容が似合うんだろう。

今日はのだめと千秋を祝う、友人だけを集めたささやかなパーティ。

目 の前ののだめと僕の間は何も変わっていないはずなのに・・・もう手の届かない女(ひと)になってしまったんだなとその姿を見て思う。

「の だめ、僕、向こうで待ってるね」
「ハイ」

僕が再び扉へと向かおうと振り返る前に、のだめは 立ち上がって僕にハグしてきた。

「今日は本当にありがとう。これからもよろしく、デス」

「・・・ うん」

僕ものだめを抱きしめた。



今 日は初恋に別れを告げる日。

だけどこれだけは、一生思っていてもいいだろう?



――― あなたは、僕だけの永遠の白い花―――





End