『元
気の素』
チ
アキが引越ししてから、僕は時々のだめを迎えに行って一緒に登校するようになった。
前
より二人でいる時間は増えたと思う。
だ
けど僕たちの関係はせいぜいクラスメイト止まりだ。
い
くら僕が頑張っても、のだめにその気が無いから箸にも棒にもかからない。
分
かっていた事だけど、かなりへこむ。
こ
れでも最近は女の子から誘われる事だってあるんだ。
将
来有望なコイビト候補として考えてくれたっていいのに・・・。
の
だめにははっきりアピールしないと分からないのかな?
鈍
そうだし。
で
も気まずくなったりしたら嫌だし。
最
近はこんな不毛なルーチンワークにはまって抜け出せない。
コ
ンヴァトのカフェでカフェ・オ・レ片手に考え込んでいたら。
「リュ
カ!」
僕
の悩みの種、もとい思い人がやって来た。
「や
あ、のだめ。レッスンは終わったの?」
「ハ
イ。今日は真っ直ぐ帰りマス」
の
だめが真っ直ぐ帰る日は、チアキに会う日。
眩
しいくらいの笑顔が憎らしい。
「ど
うしマシタ?元気ないデスね。そだ、いいものがありマスよ」
ご
そごそと鞄から取り出したのは、ピンクの包みのキャンディ。
「ハ
イ、あーん」
包
みごとくれるのかと思えば、のだめは包みを開けて僕の口に持ってきた。
こ
のまま食べたらのだめの指まで食べちゃうよ。
の
だめ、分かってないよね。
固
まる僕に。
「大
丈夫デスよ。まだ買ったばかりだし、美味しいデスよ?のだめの元気の素です!」
全
く違う心配をして熱心に勧めてくるから、もういいやってキャンディにぱくついた。
案
の定のだめの指も唇に触れた。
「美
味しいでショ?」
無
邪気にのだめは笑うけど。
僕
はキャンディの甘さとのだめの指の柔らかさのせいでいっぱいいっぱいだ。
「元
気出してね?リュカ」
別
れ際にそう言い残して去って行くのだめの後姿を見送りながら。
僕
の元気の素はキャンディじゃなくて君なのに、と聞こえるはずも無いけど言ってみた。
End