花 嫁はあいつの彼女

今日の仕事も疲れたなーなんて思いながら暗くなったパリの街を歩いて自分の家路についた。少し お酒を入れてきたせいか頭がくらくらする。
ただいま、と家に帰ってくるとなぜか電気がついていた。ちゃんと朝消していったはずなの に、もしかして空き巣!?


俺は急いでリビングにいくと部屋の中があらされているように汚 かった。仕舞ったと思いつつも、そんな中キッチンのほうから声が聞こえてきた。何処かで聞いたことのあるような女の声。誰だ?
「ぎゃ ぼーっ!おなべ焦がしちゃいましたーー!!」



その声とともにがしゃー んというひどい物が割れたような音がする。
急いでキッチンへかけよるとそこにいたのはあいつの・・・・あの千秋真一の彼女だった。
な んでこの女がここにいる?それにどうやって入ってきた?


「おい、お前」


俺 があいつの女に声をかけるとうるうるとした目で俺を見ている。
「ユキさん、おなべ焦がしちゃいました・・・」


火 から離れ床に落ちたなべ。さっきの盛大な音はこいつか。
ナベの中は真っ黒くいまだ、なんの物体かわからないものがある。


そ こから変な煙が出ていて、それを女は素手で触ろうとしている、そうだ、この女はピアノ奏者、今手を怪我させたら危ない。
「触るな!俺 が片付ける」

「むきゃああ」

なんでこんなことまでしているんだろう、 俺はテキパキとそのナベとキッチンの上を片付けて言った。
それを口を尖らしながら申し訳なくこちらを見ている。



そ んな彼女を見るとなんだか俺が悪いような予感がしてついつい手を差し伸べてしまった。
「大丈夫か?」
「は い・・・・」

なんでここにいるんだろう、もしかして、あいつと喧嘩したか何かだろうか。
「ユ キさん」



でも何故俺のことをユキさんなんか呼ぶ?自分でいうのもなん だが、確かこの女の俺の呼び名は小をするときズボンを下ろさないと出来ない人だったじゃないか?
「あのさ、お前なんでこんなところに 居るんだ?」



さりげなく俺が聞いた言葉にあいつの女はびっくりした目 を見せた。そしてわっ、と泣き出す。


「ユキさんひどいです!!なんでこんなところにいるん だって言い方ないじゃないですか!!
のだめユキさんに一目ぼれして結婚したじゃないですか!!もう忘れたんですか!!!?」


そ の言葉を聞いて俺の頭はパニックになった。


おいおいどういうことだよ、いつこの変態女ちゃ んと結婚したっていうんだ!?
またこの変態ちゃんの妄想か!?


「ちょっ と待てよ、あんたには千秋真一がいるだろーが!」
「むきゃー誰デスかその男は!のだめは松田さん、ユキさんだけですよー!ユキさんは 相変わらず浮気デスか・・・?のだめもう耐え切れませんーこうなったらのだめが襲うまでデス!ムッキャーー!!!」


お いおいおい、ちょっと待て、待てよ、何があって何でこうなるんだ?千秋真一を知らないだと?お前の彼氏だっただろうが!
だけど俺はこ の怪力女にはかてるわけもなく・・・・・・







チュ ンチュン・・・・・・・


気がついたら俺がいたのは千秋真一の部屋だった。

「気 がつきましたか松田さん」
「あれ?なんで俺・・・」
「記憶にないんですか?」
「記憶?」
俺 が言うと千秋真一ははーと盛大な溜息をついた。
「昨日酔っ払って俺のマンションに来たじゃないですか、これで二回目ですよ!」
「は・・・・・・・・・?」
「の だめと一緒にどろどろに酔って・・・あいつは向こうで寝てますが。」
「夢・・・・・・・?」
「何ですか?」
「い やなんでもねーよ」
「テーブルの上に朝食用意してますんでそれ食べて早く出て行って下さいね!決してのだめに手だしたりしたら承知し ませんよ」
そういうと千秋は部屋を出て行った。
酔って千秋の家・・・
ああそうか、昨日偶然 道端で変態ちゃんとであってそれで俺がご馳走してなぜかバーで二人で飲んで、そこから記憶がない。
俺は頭をわしゃわしゃと掻くと千秋 の用意した朝食を食べ、サンキューと書いた置手紙を残し、この部屋を出た。
もうあんな夢は三度とごめんだ。




ま さかの夢オチ!