シャーーーーーー。 のだめがシャワー室でシャワーを浴 びている音が聞こえる。 千秋はそれを聞きながら、ベッドに座り頭を抱えていた。 ………なん てことをしてしまったんだ……。 好きだ、とも、愛してる、とも言わずに突然の衝動的なキス。 あ いつはどう思っただろうか。 のだめは呆然とした表情のまま、あれから一言も口を聞かない。 さっ き、 「汗をかいたから…」 とシャワールームにぼーっと入っていった。 俺 は、なんであんなことをしてしまったのだろう。 「先輩と同じ舞台に立って見せマス」と言ったのだめが健気で可愛く見えたから…? い や、本当は、もっと前から気づいていた。 自分があいつのことをどう思っているかということに……。 ガ タッとシャワー室の戸が開いて、ネグリジェ姿ののだめが出てきた。 それは千秋の母親から譲り受けたものらしく……なんだかとてもセク シーで色っぽい……。 「先輩……シャワーお先にいただきましタ……。次、どうぞ……」 赤 くほてった熱気を帯びたのだめの顔は、何を考えているのかわからずにこちらを見ようともしない。 …… これはどうなるんだ?……一部屋に二人きりのこの夜は……。 ちょ うどそのころ、隣の部屋であるリュカにあてがわれた部屋では残り全員が集まっていた。 「う〜ん、なんだか、よく 聞こえないわね……肝心なところなのに…」 ターニャはコップを壁に当てて隣の部屋の一語一句まで聞き漏らすまい とスタンバッていた。 「ターニャ…さすがにそれはやめた方が…」 とお そるおそる言うフランクにターニャがキッとなって言い返す。 「何よ!あなたが言ったんじゃない!。千秋とのだめ がいい雰囲気になったから…きっと勝負は今晩だよ…って!!」 「いや、確かにそれは言ったけど…」 「趣味が悪い よ…人の部屋を盗聴だなんて…」 ふうっとため息をつく黒木。元来彼は、こういった覗き見趣味はないのだ。 「な、 何よ!あんただってあの二人がどうなるか興味があるくせに!あんた、のだめのこと好きだったんでしょ!?」 「あ、相変わらずデリカ シーがないな!!そんなこと君には関係ないだろう!!」 ぎゃあぎゃあと二人が言い争っている間に、リュカはすた すたと部屋を出て行った。 「リュ…リュカ?」 「あ の……先輩、次、シャワー浴びないんですか…?」 沈黙に不思議に思ったのだめが首を傾げる。 そ のしぐさも無意識に誘っているようで妙に色っぽい……。 「のだめ……」 「……ハイ?」 「……… 俺は………俺は………」 千秋のそっと差し出された手が、のだめの肩に触れようとしたそのとき……。 「の だめーーーー!!」 ガラっとドアが開いて入って来たのはリュカだった。 思わず隣室でずっこ けるターニャ、黒木、フランクの3人組。 「リュカ!どうしたんデスか?」 「……なんだか、 このお城、広すぎて…怖くて一人じゃ眠れないんだ……。のだめ、ママの代わりに一緒に寝てくれる?」 「ああ、そうデスね。リュカの年 で、まだ一人でお泊りは早すぎましたネ」 そう言ってのだめはベッドの方を見る。 「じゃ あ、このベッドに3人で寝ましょうか」 「……いやだ!。千秋、なんだか寝相が悪そうだから蹴っ飛ばされそうだし」 「あ あ、そうですネ。先輩、寝相が悪いですしネ(なぜ知っている?)」 のだめは千秋に向き直るとにっこり笑って言っ た。 「じゃあ、すみませんが、先輩。リュカと部屋を交換してあげてくれませんか?リュカはまだ子供なんで……」 「………………」 寂 しげな子供のようにのだめにすがり付いてすすり泣くリュカを目の前に、千秋はなすすべがなかった。 自分でも納得がいかないまま、部屋 を出て行く千秋の目に、のだめの胸に顔をうずめたリュカがニヤッと笑う姿が見えた……。 で ブノワ城の夜は、おしまい(笑)ってな感じで……。 |