wishing we could both be in the garden...



眠 れぬ夜の庭で



「ちょっと教えてくれんか?」
「な に、おじーちゃん?」
「このなぁ・・・」

おじいちゃんが最近パソコンを買った。
『年 をとっても新しいことに挑戦せんといかん!!』
とか何とかいって最新型を。
でもいくつになっても新しいことに立 ち向かうにはそれなりの苦労もあるようで、こうやって時々僕が手伝う羽目になる。
まぁいいんだけどね・・・。

「ほぉ 〜。」

おじいちゃんは最近教会の合唱団の団員が立ち上げたとか言うHPを見ていた。
これを 出すまでに四苦八苦していたらしいんだけど・・・まぁいいや、結果オーライだし。

「今の若い奴は何でもするんだ なぁ。」

感心しながらあちこちページを覗き込んでいたおじいちゃんはひとのびすると席を立ち上がった。

「あ、 おじいちゃん、終わったなら僕使ってもいい?」
「ん、いいぞ、教えてくれてありがとう、リュカ。」

僕 はまだ自分のパソコンを持ってないからこうやって一番最新型を持っているおじいちゃんのを借りるのが常だ。
タダじゃないよ、ちゃんと こうやっておじいちゃんにイロイロとレクチャーしてあげてか使うんだから。
明日は休みで、まだまだ眠れない夜だし。

「さ てと・・・。」

自分のIDでパソコンを立ち上げなおして、メールのチェック・・・やばい今日は図書館の本返却日 だった。
あそこの受付のおばさんは結構厳しい。
のだめがこの前1日送れて相当怒られてたっけ・・・どうしよう、 明日は休みだし。
なんて思いながらもそのことはいつの間にか頭からスルー。
友達からの他愛もないメールやらメル マガやら一通りチェックして、ブラウザを立ち上げてネットサーフィン。
今日のニュースにサッカーの試合結果、WRCのシトロエンにプ ジョーはっと・・・最近出たちょっと気になるピアニストのCDレビューを読んでみたり。
あ、これは・・・。

「こ いつってこないだのだめたちが一緒にウィーンに行ったっていってたなぁ。
 相変わらず派手だなぁ」

デ シャン・オケの定期公演の記事。
「白王子」と仇名される華やかな風貌の指揮者の写真を見ながら、それに対する華美とは無縁そうなのに それでも誰よりも目を引く「黒王子」を思い浮かべる。

「なんでのだめの周りってこういう目立つ奴ばかりなんだ ろ」

千秋もそうだし、ヤスも地味な風貌だけどその分この国の中ではやっぱり目立つし。
フラ ンクやユンロンだって存在感ありありだし。
そんな中で僕は彼女にどんな風に見られてるんだろう・・・。

「・・・ あ?」

メッセンジャーからメッセージのサイン。
誰だろ・・・クリックしてウインドウをトッ プに出すと・・・。

nodame>リュカ〜まだ起きてるんですか〜

噂 をしたらなんとやら・・・のだめからだ!
お風呂上りなのか、ちょっと頬が赤くなって、髪もボサボサだけど・・・。
起 きてるんですか〜って、まだ10時なんだけど。
いったい僕をいくつだと思っているんだろう、あの人は・・・。
そ の風貌や言動もあわせて、10近くも年上だとは思えない彼女にお子様扱いされている。

lucas>まだ起きてる よ!

ちょっとだけ不機嫌さを言葉に乗せて返信を送る。
でも彼女は結構、いやかなり鈍いから そんな僕の気持ちはわかんないだろうな。

nodame>明日お休みだからって夜更かし厳禁ですョ
lucas>・・・ 大丈夫だよ、のだめこそ美容の大敵じゃないの?
nodame>子供がなに生意気な口聞いてんですか!

だ から子供子供って・・・一応僕も15歳になったんだけどなぁ。
それでも彼女から見たらまだ子供なんだろうか・・・。

lucas> もうすぐのだめに背も追いつきそうなのに・・・。

ちょっと拗ねてみる。
子供子供というから 子供の特権を使わせてもらおう。

nodame>あ〜拗ねないで下さいョm(__)m。手ものだめ追いつきそうで すよね。

日本人が謝るときの仕草だとかいう顔文字とやらで返ってきた。
そう、遺伝子的なこ とで考えれば多分僕は彼女よりも大きくなると思う。
出会った頃はまだ僕のほうが見上げていたけれど、最近はその目線が近づいてきた。
彼 女が僕を見上げる日もそう遠くないとおもう・・・。
でも出来れば今が一番いいな。
彼女の笑顔を何もしなくても一 番近くで見られるから。
・・・そんな思いを知ってか知らずか・・・彼女はメッセージと次々に打ち込んでくる。
今 日の授業の話、アナリーゼの時の思わぬ展開、カフェで美味しかったスイーツの情報。
今日も学校で話したことばかりなんだけど・・・。
眠 れぬ夜に気になる彼女との他愛もないおしゃべりは延々と続く気がした。

「ふぁぁぁ〜」

気 がつくと時計は12時前。
さすがにこんなにやってたらおじいちゃんにも怒られるなぁ。
それに僕も眠たくなってき た。

nodame>眠たいですね〜。

そんなメッセージが届いたかと思 うと・・・彼女はデスクにコテンと頭を付いた。

lucas>のだめ??

そ んな僕の呼びかけのサインはきっと届いていないだろう。
長いまつげが彼女の目元に影を作って、寝息が聞こえてきそうな表情をしてい る。
柔かそうな髪の毛も、温かそうな白い肌も、ふっくらとした柔かそうな唇。
無防備なまま僕の目の前にあるのに 触れられないもどかしさを感じる。
画面越しだからか・・・それとも・・・。
彼女の綺麗な薄紅色の唇をそっとな ぞってみてもそれは平面の人工物でしかなかった。


そんな・・・とても近く感じるながらとて も遠い存在の彼女の穏やかな寝顔を見ていたら、その彼女の頭上に・・・!!


・・・チアキ か、ふん。
今日はのだめの家に居たのか。
彼女は寝ぼけ眼でチアキのほうを見上げている。
な にやら会話をしているけれどこちらに音声は伝わらない。
そして僕の前では見せない顔でフレームアウトした。
チ ラッと二人並んだ後姿が見えて・・・。

「なんだよ、まったくさぁ」

眠 れぬ夜の庭で彼女と一緒にいるのが奴だなんて・・・。




♪♪♪




何 をしても起きる気配のないのだめをベットの中に押し込んでからリビングに戻って来たついでにまだ電源の着いているパソコンを覗き込む。
こ こ数日マルレの事務所に篭ってたりとオケのリハ続きで世間から隔離された状態だったので・・・。
せめて今日の出来事ぐらいは知ってお かないと。
のだめのパソコンを借りて自分のメールボックスに繋いで必要なものだけチェックする。
立ち上がったま まのブラウザには不本意ながらいやというほどに馴染んでしまったプリごろ太の同人HPらしきものが。

「あいつ は・・・またこんなもんばっかり見て・・・」

ボヤキながらニュースやらなんやら、サクサクとチェックしている と・・・何やらメッセンジャーに動きがあった。


lucas>チアキ、いる?
nodame> なんだ、まだ繋がってたのか
lucas>悪い?
nodame>いや、別に

・・・ え、ちょっと待て?

nodame>なんで俺だってわかる?
lucas>・・・なんでかなぁ 〜??

このやろうガキだと思ってなめてたらその言い草は何だ!!
見た目はまだあどけなさの 残る愛らしい風貌の少年のなかにある底意地の悪さが憎たらしい。

「・・・これか。」

よ く見るとwebカメラが接続中のサインを示していた。
メッセンジャーからまだ幼さの残る満面の笑みを湛えたリュカがこちらに手を振っ ている。
てことはさっきの俺とのだめの様子も見ていたのか・・・俺が思いっきり鉄拳食らわせていたのを。
という か、のだめの間抜けな・・・人には見せたくない寝顔をこいつはずーーーっと見ていたのか?!

lucas>さて、 僕もそろそろねよっかなぁ・・・お子様だしね。

大人は子供に手を出せない・・・という暗黙のルールを楯に不敵な 笑みを浮かべた向こう側から「おやすみなさい」というメッセージが送られてきた。
俺が返す間もなくさくっとサインアウトの表示・・・ くそー!!
苛立ちながらマウスを操作して俺も急いでパソコンの電源を落とした。
なのに勝ち誇ったような顔と笑い 声が聞こえてきたような気が・・・奴のターゲットはちゃんと自分の手元にあるのに、えもいわれぬ敗北感がなぜか俺の胸に漂っていた。
・・・ 眠れぬ夜になりそうだ。
俺は立ち上がって気を紛らわせるためにキッチンへ向かう。
確かこの前買っておいたワイン があるはずだった・・・あいつ飲んでないよな、勝手に。

そうだ、あのwebカメラは暫く俺の家にもって帰ろう。
由 比子が取り付けたから何とか言い訳しておけば・・・。




♪♪♪




「て なわけでwebカメラ先輩のとこに貸し出し中なんですよ。」

全くシスコンですよね・・・なんて屈託のない笑顔を みせるのだめ。
カフェオレカップを両手て持って少し冷えた手を温めていた。
なんとでもいえ・・・当の本人はとい うとそんな感じで何食わぬ顔で横を向いてコーヒーを啜っている
でもそれは千秋の言い訳・・・きっと理由は別のことだと僕は知ってい る。

−−−のだめは寝てるときものだめだね♪

のだめにわからないよう に千秋に向かってつぶやいてみたら、彼は眉間に深いしわを寄せた。




− 終−




のだめとリュカのラブラブ?チャットに打ち のめされるのは千秋という気分的には「リュカノダ」でやらせていただきました♪
(だから「ちあのだ」でやってるアタシのHPには載せ られないんです)
へこたれないでいつか千秋を本気で打ちのめしてやるという決意のリュカってことでどですか(笑)
web カメラ越しのチャットについてはイメージで書いてるので実際のものと若干違うかもしれませんが。
ちなみにリュカの名前の綴り方です が・・・「リュカ数」という数学の理論を参考にしたのでこれでいいのかどうかわかりません。
(だってこの人確かフランス人だもん)
ど うしても別の名前(某ハリウッドの特撮の人とか)が浮かぶようでしたら無理やり変換してください(笑)
あと、リュカがサッカーやら WRCやらといってるのはあたしの妄想ですね。
・・・WRC、フランスのこの二つが大活躍ですし。
お読みいただ きありがとうございました。

ハギ姉さま、お誘いいただきありがとございますm(__)m
お かげで「見た目天使中身真っ黒(笑)」という可愛いリュカを書くことが出来ました♪
イヤ〜幸せだなぁ♪