夢か現か 松田リベンジ編
千秋が不機
嫌オーラを全開にして松田の泊まっているホテルに来た夜。
実にスッキリした表情でのだめを押し付けて帰った翌朝。
あ
れから5日が経過していた。
ここはマルレの事務所。
二人の男が向かい
合わせに座っている。
その何処か異様な雰囲気の男達をテオが遠目で見ていた。
そのうちの一
人、松田幸久はテオに出されたコーヒーを涼しげな顔で飲む。
「で、どうして松田さんがここ
にいるんですか?」
突然やってきた松田に千秋は訝しいむ。
そんな千秋の目の前に差し出した
のはチケット2枚。
「これ、オレの次の公演のチケット。あの子と一緒に聴きにこいよ」
「あ、
ありがとうございます」
ちょっと拍子抜けするが、このためにわざわざ来たとは思えなかった。
絶
対に何か企んでいるに違いない。
「そういえば千秋の愛する彼女は元気?」
「お
陰様で」
「あの後大丈夫だった?変な小細工して嫌われちゃったんじゃないの?」
「そ
んなことないしほっといて下さい」
ぶっきらぼうに答える。
テ
オはここは関わらないのが無難と忙しい振りをして他の場所へ移動してしまった。
「のだめ
ちゃんってさ、見た目は可愛いよね。眠ってる時は可愛さ倍増だし」
ピクっと千秋のこめかみが動き眉間に皺が寄
る。
「そんな顔すんなって。事実だろ? オレはここ数日それを再認識してるんだ」
こ
れを見てみろと、千秋が見せられたのは松田が携帯で撮影したのだめの写真画像がいくつかだった。
のだめと松田のツーショットや酔っ
払って色気づいた(千秋目線)のだめ。眠ってるのだめなど数点。
「な、何で松田さんがこん
なもの持ってるんだ! これ明らかに盗撮じゃねーか! 今すぐ抹消しろ!」
「えーーーー嫌だよ。記念すべき夜だ
し、結構良く撮れてると思わないか? 中身はともかく黙ってれば可愛いよな」
「つべこ
べ言わず全部抹消しろ!」
「イ・ヤ・ダ」
「消せよ」
「嫌
だもーん」
消せ、嫌だの攻防がしばらく続いたのち、どうなったのかというと。
「じゃ
あ画像一つ削除で100ユーロな。お前のトコに転送すればプラス50ユーロってことで」
「いいですよ、それで。
それにしてもちゃっかりしてますよね松田さんって」
「この位あたり前だろ。オレにとっても貴重なものだったんだ
から。あーもったいない」
「全く・・・」
「で、どれがいいのか選べ
よ」
「あ、じゃあ、これと、これと、これと…」
千秋ちょっと嬉しそう
である。
今日手に入ったモノは当然のだめには秘密だ。
結局はギブアンドテイク。どっとも
どっちである。
「今後こういう事は金輪際しないで下さいよ」
「それは
約束出来ないな」
「松田さん! もし同じ事したらこっちも松田さんの恥ずかしい写真盗撮しますよ? あいつそう
いうの得意だし」
「へーそうなんだ」
「オレはしょっちゅう盗撮の被害
を被ってますよ」
「あはははは。そうなんだ。本当に変態チックで可愛いな。
そしてそんな彼
女が好きで好きでたまらない千秋真一君は変態マニアか。面白れー」
「変態マニア・・・」
「だ
ろ? どう考えても。じゃオレ帰るわ。あの子と末永く仲良くな〜」
ここにはもう用はないと
立ち上がってそそくさと帰っていく。
「結構儲かっちゃったな。美味いものでも食って帰ろうっと」
千
秋にリベンジもして鼻歌まじりに上機嫌な松田。
一方の千秋はその場で固まったままの状態でテオに発見されるのである。